快楽に溺れる。
 それはなんだか青臭いガキの頃に少しばかり憧れたロマンポルノの架空の世界の話だと思っていた。大学のコンパで女の子にモテまくって、安アパートの一室で酒池肉林ウハウハになって、勉強もせず学校にも行かず、ひたすら次から次へとSEX三昧の日々が送れたらなんて、酒飲みながら友人達とバカ話で盛り上がっていた架空の話。
 無理、無理、有り得ない。
 若い時は恋人が出来たら、そりゃあ彼女とたくさんエッチしたけど、『溺れる』ほどのSEX三昧なんてしない。彼女とは普通のSEXをする。回数は一晩に1〜2回、いや、大学時代なら昼間にやったことだってある。調子のいい時に『抜かずの三発』なんて無茶やらかして、後で彼女がひどくご機嫌斜めになってしまったこともあった。
 彼女の部屋にお泊りしたって、半年も経てば毎日エッチなんてしなくなるし、1年も経てば週に1〜2度くらいになってしまう。普通の恋人同士の性事情なんてそんなもんだと思う。
 ましてや自分はそれほどSEXに執着している方じゃなくて、彼女と過ごす時間が心地いいと思うだけで、そこに常に性欲があるわけではなかった。あんまりやらないと彼女の機嫌が悪くなるから、ほどほどに義務的に行為を果たしていたこともある。
 別にSEXが嫌いなわけではないし、性欲が無いわけでもない。青臭いガキの頃にウハウハな夢を見るくらいには興味はあった。だけど割と淡白だったのは、多分……『溺れるほどの快楽』を知らなかったからだ。
 気持ちいい……SEXは気持ちいい。射精するまでの昂りと、その瞬間のオーガズムは当然のことながら気持ちいい。またそういう直接的なことではなく、好きな女性の体を愛撫するのは気持ちいい。でもそれらは多分『溺れるほどの快楽』とは随分遠い存在だったのだろう。
 今まで知らなかったのだ。溺れるほどの快楽を……。


 今が昼なのか夜なのか解らなくなっていた。どれくらいの時間が経っているのかさえ解らない。解ることはさっきまた何度目かの射精をしたことだけだ。
 ツーンと鼻の奥が痺れるような感覚と共に背筋に電流が走るような感覚と頭の中が真っ白になる感覚。ゾクゾクと下半身から沸き起こるとても気持ちのいい痺れの波。腰がビクビクと痙攣して、ペニスが爆発する。押し寄せる快楽の波。ドカンと爆発した後は、何度も何度も波が押し寄せて、次第に間隔が長くなり引き潮のように引いていく。そして残る脱力感と痺れの余韻。
 その残ったジワジワとする甘い痺れの余韻が無くなる前に、体に刺さった太い楔がグイグイと中を突き上げて、消え去りそうになっていた痺れの余韻を再び呼び戻す。中を蠢く肉塊の律動は、柔らかい内壁を擦って何度も中から刺激する。カリの出っ張りが、前立腺に当たる度に体を稲妻が走る。背を反らせて喘ぎを漏らす。喘ぎは泣き声に変わり、「いやだ」「もうやめろ」と呟くが、それが本心ではないことは伊勢崎自身の体が示している。
 自ら腰を揺らし、足を広げ、もっともっとと誘う体。それは快楽に溺れる体だ。自分が自分ではなくなるくらいにめちゃくちゃに交わって、繋がって、腰を振って、射精して、気を失うまで繰り返す。


「ん……」
 何度か瞬きをして、ぼんやりとなる思考を無理矢理立ち上げて、顔を上げてようやく自分が気を失っていたことに気づく。眠っていたというより気を失っていたが正しいはずだ。
 ゆっくりとではあるが次第に頭が働き始めて、自分の体を取り戻す。両手を動かしてうつ伏せに寝ていた上体を起こす。体が鉛のように重い。ひどくだるい。それでも仕方なく無理矢理に起き上がり、ベッドの上に胡坐をかいて座った。視線を隣で眠る世良へとやる。とても無防備に無邪気な寝顔を晒していた。それを見てどこか安堵するとゆっくりとベッドから降りた。


「伊勢崎さん!」
 トイレから出てきたと同時に、慌てた様子の世良の声が出迎える。
「なんだよ」
 気だるそうに伊勢崎は答えて、ボサボサの頭を手で掻き揚げた。世良は全裸のままで伊勢崎の元へと歩み寄ってきた。
「どこかに行ってしまったのかと心配しました」
「こんな格好でどこに行くんだよ……服はそこに散らばってるだろ?」
 伊勢崎が顎でベッド脇の床を指し示す。そこには二人分のシャツやジーンズがバラバラに脱ぎ捨てられていた。
「小便だよ、小便……こっから出るのは精液だけじゃないんだよ。生理現象は止められないだろ?」
 伊勢崎がわざと自分のペニスを弾いて見せてニヤリと笑って世良を見ると、世良は笑わずに真面目な顔で伊勢崎をみつめていた。
「……なんだよ」
 伊勢崎が少し戸惑った様子で世良に聞き返すと、世良は両手を伸ばしてきて伊勢崎の体を抱きしめた。
「お、おい」
 世良は伊勢崎の体を黙って抱きしめると、愛しそうに伊勢崎の肩口に頬を擦り寄せて首筋にキスをした。
「世良! ちょっ……やめろよ。これからオレ、シャワー浴びるんだから、腹も減ったし……」
 伊勢崎は少し強い口調で、世良を嗜めるように言っていたが、次第に声のトーンも小さくなりやがて唇で塞がれて言葉を失った。塞がれたのか自分から口付けたのか解らない。見つめ合えばその視線の絡まりから、抱き合い求め合ってしまう。
 もうずっとこんなことを繰り返している。今日がまだ土曜なのか、もう日曜になっているのか、それとももっと日にちが経ってしまっているのか、そんな事すら解らない。ずっとずっとSEXばかりをしていて、それ以外の人間らしい生活は何もしていない。だが空腹感は不思議と無かった。
 後ろから抱きしめられている形のままキスを交わす。世良の両手が伊勢崎の胸をまさぐり乳首を愛撫する。その世良の手に、伊勢崎は自分の手を重ねた。ほんの少しばかり伊勢崎よりも大きな世良の手は、別の生き物のように蠢いていた。長い指が乳首を愛撫する動きを、手のひらの下に感じて一緒に気持ちが昂る。
 そのまま世良の動きにあわせてか、それとも重ねている伊勢崎の手が招いたか、次第に胸から腹へと下へ降りていき、やがて半分勃ちかけている伊勢崎のペニスへとたどり着く。やんわりと包み込むように握られて、伊勢崎は小さく甘い声を漏らした。
「もう何も出ないよ」
 少しかすれた声で伊勢崎が呟いた。何度も射精して精液もあまり出なくなった。ただ勃起して達するときに射精感のオーガズムを感じるだけだ。わずかばかりの薄い色の汁が出るだけだ。
「だけど勃起してる」
 世良が耳元でそう呟いたので伊勢崎はゾクリと身を振るわせた。
「お前だって……勃起してるじゃないか……さっきから腰に当たってる」
 尻の少し上の辺りを、勃起した世良のペニスが突付いている。
「オレはいつだって伊勢崎さんには欲情しますから」
「お前……そんなんじゃ仕事できないだろう」
「はい、仕事になりませんね」
 伊勢崎はクスリと笑ってまた口づけ合う。
「入れていいですか?」
「さっきからずっと入れっぱなしのくせに……もうオレの尻の穴はガバガバになっちまってるんじゃないかと思うよ……お前のそのデカチンの所為で、肛門がヒリヒリして痛いし、開きっぱなしになってる気がする」
「そんなこと無いですよ。伊勢崎さんのここは、まだまだキツク締め上げてきますから」
 世良はそう言って、伊勢崎の尻に右手を滑らせて、人差し指でアナルを弄った。
「あっああっ」
 伊勢崎は思わず喘ぎ声を上げながらガクリと膝を曲げそうになった。世良がその体を支えて腰を掴む。そのままの姿勢で立ったまま、ペニスを挿入させた。亀頭の先をアナルに宛がい、グイグイと突くように押し込むと、ゆっくりとアナルが開いて先っぽを飲み込んでいった。アナルは赤く充血して少し腫れているが、挿入する前はギュッと硬く口を閉ざして、一見容易には受け入れない処女のように見えるくらいだった。だが一旦入り口を刺激して亀頭を押し付けると、柔らかい口を開いてその大きなカリを飲み込んでいく。
 ズブズブと肉を割って根元まで完全に挿入させると、伊勢崎が背を反らして甘い声で鳴く。深く差し入れたままで、腰をゆさゆさと揺さぶると、硬く勃起した世良のペニスが、伊勢崎の中を掻き回すように内壁を押し上げ下腹を突き上げる。その感覚に更に伊勢崎が身悶える。
 快楽に身を委ね、欲するがままに求め、気持ちよければ拒絶することはなく、何度でも挿入を受け入れる。AV女優のように恥ずかしげもなく喘ぎ声を上げて、淫靡な痴態を晒す。伊勢崎は今、自分でも信じられないような状態になっていた。頭の奥でそれは解っていたが、敢えて理性で止めようとも思わなかった。
 男のクセにこんなに恥ずかしげもなく「あんあん」と喘ぎ声を上げて、それも女のように少し甲高く甘えたような声を出す。「もっと奥まで突いてくれ」とか「激しく腰を揺さぶってくれ」とか「中に出してくれ」とか、よくもそんな恥ずかしい言葉が言えるものだと思うが、そんな卑猥な言葉も平気で言えた。
 とにかく今までの人生で味わったことのない快楽に、もっともっと気持ち良くなりたいと欲していた。世良に抱かれたい。世良とSEXしたい。もっともっとめちゃくちゃに、体が壊れるくらいめちゃくちゃに抱いて欲しい。伊勢崎の頭の中はそれでいっぱいになっていた。
「ああ、あっあっああっあ―――っ! イク―ッ!! あああ―――!」
 伊勢崎は大きく喘いで背を反らした。少しオーバーなくらいに悶え、腰を激しく痙攣させた。勃起した伊勢崎のペニスからは何も出なかった。鈴口が開いてパクパクと生き物の口のように開閉を繰り返す。そこからはジワリと透明な汁が少しばかり出るだけで精液は吐き出されなかった。だが伊勢崎の体を走るオーガズムの痺れはたまらなく心地いいらしく、恍惚とした顔で大きく口を開けてハアハアと息を荒げている。
 絶頂を迎えた伊勢崎のアナルは、射精感と共に収縮を繰り返し、深く飲み込んでいる世良のペニスを痛いほどに締め上げた。
「ああっうっううっくぅっ……伊勢崎さん……あああ」
 世良も苦しげに顔を歪ませながら、ペニスを締め付け絞り上げるような律動に、そのまま射精を促されて、激しく前後に腰を動かした。世良もまた伊勢崎とのSEXに溺れていた。伊勢崎の中はひどく熱く心地よい。ペニスに絡み付いてくる内壁の粘膜が、どんな愛撫よりも気持ちよかった。伊勢崎の中に挿入させたら、我を忘れて狂ったように腰が動いてしまう。めちゃくちゃに中を犯して、伊勢崎の直腸を突き破り、アナルを壊してしまうのではないかと不安になるのだが、それでも勝手に快楽を求めて動く体を止められなかった。
 射精しても射精しても勃起が治まらない。痛いくらいに膨張して、表面に太い血管を浮き上がらせるほどになっている自分のペニスに驚く。それが本当の自分の姿を反映しているようにも思えた。伊勢崎に対する欲望に満ちた汚れた醜い自分。渇望するほどに伊勢崎を欲し、どんなに手に入れようとも満たされず、欲望が膨れ上がっていく自分。
「伊勢崎さん」
 世良はグッタリとなっている伊勢崎の体を強く抱きしめた。
「すみません……すみません……」
「……なんで……謝ってるんだよ……」
「だってこんなに酷いこと……伊勢崎さんにして、オレ……これじゃあ獣だ」
 伊勢崎はしばらく黙っていた。世良は伊勢崎は強く抱きしめたまま、その肩口に顔を埋めていた。
「分かった……悪いと思ってるなら、とりあえず抜いてくれ……で、体を離してオレを開放してくれ」
 伊勢崎は、ひとつため息を吐いてからそう言った。世良は大人しく何も言わずに言われたとおりにした。体を離して、中に入れたままのペニスをズルリと引き抜く。伊勢崎が小さく呻いたが、世良はグッと我慢して一歩後ろに退いた。
 伊勢崎はフラリとなりながらも歩き出した。そのまま台所に行くと冷蔵庫を開けて、中からミネラルウォーターのペットボトルを1つ取り出す。扉を閉めて、ふう、と息をつきながら蓋を受けて、ラッパ飲みに、ごくごくと水を飲み始めた。冷たい水が喉を流れ落ちる。暑く火照った体が中から冷やされてホッとなった。
 半分を一気に飲み干して、伊勢崎はハアーッと大きく息をつくと、乱暴に濡れた口元を手で拭った。ぼんやりとした顔で立ち尽くす世良をじっとみつめると、ゆっくりと戻ってきた。空いてる左手を伸ばしてきて、世良の胸をドンと小突いた。
「寝ろよ」
「え?」
「ほら、いいからここに寝転がれよ」
 もう一度胸をドンと小突いてそう言ったので、世良はポカンとなりながらも大人しくその場にしゃがみこみ、そのまま床に仰向けに寝た。伊勢崎はそれを見届けると満足そうな顔で頷いて、世良の体の真ん中……腰の上の辺りを跨ぐようにして立った。見下ろすと、世良が困ったような顔で伊勢崎を見上げている。
「お前も水飲めよ」
 伊勢崎はそう言って、その場に腰を落としてしゃがみこんだ。ヤンキー座りのような姿勢になって、右手に持っているペットボトルを差し出しながら世良の顔を覗き込む。
「ほら」
 伊勢崎はペットボトルの口を世良の口元に持っていき少し傾けた。チョロチョロと流れ出る水を、慌てて世良は口をあけて受け止めた。ゴクゴクと飲んでから、ゴホッと咽たので伊勢崎は水を注ぐのをとめた。
「ゴホッゴホッ」
「大丈夫か?」
「だ……大丈夫です。水……ありがとうございます。美味しいです」
「バカ、お前の家のだろ」
 伊勢崎はそう言って笑ったので、世良はそんな伊勢崎の顔を不思議そうに見つめる。みつめてから視界に伊勢崎の姿が全部映る。股を大きく開いてしゃがみこんでいるので、股間が目の前に露になっていた。伊勢崎のペニスは萎えた状態でぶら下がっている。それでも酷く淫猥な姿だと思った。
「どこ見てんだよ」
 伊勢崎に指摘されて、世良はハッとなって視線を伊勢崎の顔へと戻した。いつもの伊勢崎の顔、かっこ良くて綺麗な顔、だが顔の下の姿は、いつもの伊勢崎ではない。一糸纏わぬ姿で、引き締まってほどよく薄く筋肉の形のついている体は、所々に世良が付けたキスマークが、赤く転々と痣になっている。薄い色の小さな乳首は少し立っていた。大きく左右に開かれた股の中心は、堂々と目の前に隠さずに露になっていて、陰毛はそんなに広い範囲に生えている訳ではないが、ビッシリと黒く濃くペニスの根元に茂っている。その下には萎えて縮んではいるが、皮が剥けて亀頭が出ている形のいいペニスと、小さく縮んでしまった陰嚢がぶら下がっていた。
「あ〜あ〜……なんだこれ?」
 伊勢崎はふいに立ち上がると、見下ろしながら呟いた。視線の先には世良の股間があった。さっきまで萎えていたはずの世良のペニスは少し頭を持ち上げている。
 伊勢崎は少し後ずさりしてもう一度しゃがみ直した。世良の膝の上辺りに腰を下すと、目の前の世良の股間を覗き込む。
「お前、本当に絶倫だな。なんにもしなくてもまた復帰できるなんてすごいな」
「そ、それは……伊勢崎さんがそんないやらしい格好するから」
「オレの所為か? お前さっきオレに謝ってなかったか?」
「あ、いえ、はい、オレが悪いです。すみません。オレが厭らしいんです。すみません」
 世良が慌てて謝るのを、伊勢崎はチラリと見てからハアとため息をついた。
「ちょっと冷やしたほうがいいのかな?」
 伊勢崎はそう言って、世良の半勃ちのペニスにペットボトルの水をチョロチョロと掛けた。
「あっああっ」
 冷たい水の刺激に、世良はビクリと体を震わせた。世良の体や床が濡れるのも構わず、ペットボトルの中に残っていた水をすべて注いだ。
「なんだよ……またちょっと大きくなってないか? 冷やしたのに……本当にお前は厭らしいな」
「す、すみません」
 世良は赤くなって謝った。
「こいつが悪いのか……」
 伊勢崎はそう言って、世良のペニスを掴んだ。半勃ちでも人並みに比べれば十分に大きい。世良のペニスも皮が剥けて綺麗な形をしていた。手の中のペニスは、水で冷やしたはずなのに熱かった。伊勢崎の手の中でまた少し大きくなったような気がした。
「悪い子だ」
 伊勢崎はそう言うと、更に体を屈めてペニスを口に咥え込んだ。
「い、い、伊勢崎さん!」
 伊勢崎は深くペニスを咥え込んだが、ペニスが大きすぎて半分も咥えることが出来なかった。それでも舌を動かして懸命にペニスを愛撫し始めた。頬をすぼめてジュジュジュッと吸い上げたり、舌で裏筋を扱くように舐めたり、カリ首の付け根を舌先で愛撫したりした。
「あ、あ、伊勢崎さんっ……ダメです……そんなしたらっ……」
 世良のペニスが完全に勃起するのに大した時間は掛からなかった。ムクムクと膨張し、伊勢崎の口の中もいっぱいになる。伊勢崎は顔を上げると、天井に向かって高くそそり立つ世良のペニスをじっとみつめた。
「すげえな」
一言そう言ったかと思うと、伊勢崎は膝を付いて腰を浮かせると、世良のペニスを掴んでその上にゆっくりと腰を落としていった。グッと一度引っかかってから、アナルに上手く入るまで伊勢崎は苦しげに喉を鳴らして腰をゆすった。やがてゆっくりと伊勢崎の中にペニスが入っていくと共に、伊勢崎の腰が下へと落ちていった。
「あっあああっあ―――っ……んんっ……すごっ……深い……」
 ペタリと伊勢崎の尻が世良の腰に着いて、伊勢崎は喘ぎながら呟いた。
「伊勢崎さん!」
「んんっ……はあはあ……いいから……お前は黙ってオレに犯されてろ」
 伊勢崎はそういうと、腰を動かし始めた。左右にゆすったり、上下に腰を動かしたりした。その伊勢崎の姿は何よりも厭らしかった。顔を上気させて、ハアハアと息を荒げながら、自分で動かしてその度に喘ぎ声をあげて悶える。
 世良はしばらく驚きながらもその姿から眼を放せずに、ただただジッとその淫乱な伊勢崎の姿をみつめていた。堪らなかった。
「世良……お前は謝る必要は無いんだ……オレだってお前をこんな風に犯したいんだ。お前にペニスを突っ込まれて、グチャグチャに中を掻き回されたいんだよ。オレだって厭らしいんだ。見ろよ……今のオレを……厭らしいだろ? お前を咥え込んで、腰を動かして……ああっ……はあはあ……こんな風に喘いで……」
「伊勢崎さん!」
 世良は堪らず、ガバッと伊勢崎の腰を両手で掴むと、グイグイと腰を突き上げて伊勢崎を攻め上げた。
「ああああっっあっああっ!」
 その激しい突き上げに伊勢崎は大きく喘いで背を反らす。
「伊勢崎さん! 愛してます! めちゃくちゃにしたいっ……オレだけのものにしたい!」
「ああっあっ……世良っ……めちゃくちゃにしてくれっ」
 伊勢崎は腰を掴んでいる世良の腕を、ギュッと爪を立てるようにきつく握り締めた。


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