SEXは、体の相性がある……そんな言葉をふと思い出していた。誰が言った言葉かさえも解らないそんな言葉、伊勢崎は今まで考えた事もなかったはずなのに、なんで今そんな言葉を思い出してるんだろう? と、まだ軽くハイな感じの頭の片隅でぼんやり思う。
 いや、なんでそんな言葉を思い出したのかなんて、答えは解っている。ノーマルなはずの伊勢崎が、男相手にキスしたばかりか、欲情して勃起しているのだ。キスは気の迷いかもしれないし、勃起だってキスして気持ちよくなれば男の生理現象で勝手に勃ったりするもんだ。そう片付けてしまえば、別に悩むほどの事もないだろう。
 童貞の世良が早出ししてしまって、興ざめしてしまうような状況で、勢いに流されてついついキスしてしまったと言い訳したいのだが、伊勢崎のギンギンに張ったペニスは、まったく熱が冷める様子はなく、ズボンの中で苦しげにびくびくと脈打っているのだ。
 焦れるような疼きが、体の熱を冷めさせる事は無く、頭の片隅で自分も早く射精したいとさえ考えている。前を開けて立ち上がったペニスを擦りたい衝動と、それを拒否する理性が攻めぎあっていた。
「すみません」
 何も言わない伊勢崎の態度をどう思ったのか、世良は実に情けない顔でまた謝った。伊勢崎はほんのり上気した顔で世良をみつめると、一瞬どう対応すべきか迷った。
理性が「いつまで乗っかってんだよ!」と、世良を払いのけるべきだと言い、欲望が「オレのペニスを擦れ」と言えと言う。
世良にペニスを擦らせるなんて、それはいくらなんでも……と自分にツッコミを入れつつ、ちょっとまたそれを期待してしまったのか、股間がズクンと熱を持った。
はあ、と熱い息を吐いてからゴクリと唾を飲み込む。
「お前……それ、脱いだら? 気持ち悪いだろ」
なんでそんな事を言ってしまったのか、後で考えても解らないのだが、伊勢崎は世良の濡れた股間をみつめながらそう言った。
「あ……ええ……でも……」
「脱げよ」
 さすがにちょっと恥ずかしいのか、赤くなって躊躇する世良を見たら、伊勢崎の中の意地悪な気持ちが触発されて、命令口調で囁いていた。
 世良は赤い顔でとても困ったように眉を寄せて伊勢崎をしばらくみつめてから、のろのろとした仕草で大人しく従ってズボンのベルトを外し始めた。伊勢崎はその様子をジッとみつめる。世良は伊勢崎に見つめられているのを意識して、耳まで赤くなっている。
ボタンを外してファスナーを下ろすと、むわぁっと青臭い雄の匂いが鼻についた。グレーのボクサーパンツの前の部分がベニスの形をクッキリと浮きだたせて張り出している。濡れて濃い色に布地が変色している。赤く充血した亀頭がパンツの上の部分からはみ出して顔を覗かせていた。
 射精したばかりのはずのそれは、まだ何事もなかったかと言うように、怒張したままヒクヒクと蠢いて、パンツの中で苦しそうに見えた。先からは汁を滴らせている。まだまだ臨戦体勢にあった。
 伊勢崎をそれをジィ〜ッと凝視してしまった。まだまだ元気なのは若いし童貞だから仕方ないとして、伊勢崎を驚愕させたのはそのサイズだ。
「で、デカイ……馬並……」
 思わず小さな声で呟いてしまった。唖然となる。伊勢崎も決して自分のに自信ない訳じゃない。普通……いや、結構立派な方だと思ってる。だけどこれは伊勢崎のより……普通と比較したって……2倍近くありそうに見える。いやいやさすがに2倍は無いだろうと思うけど、その太さも長さも、かなり……かなりのものだ。
 ゲイでなくたって、男という生物は他人のそれの大きさには敏感であり、興味があるものだ。小便所に知人と隣同士に並んだら、ちらっと黙視確認するのは当然の行動で……そういえば、今まで世良と連れションした事なかったなぁ……なんてどうでも良い事を考えてしまうのは、それだけ驚いて混乱してしまっていたからだと思う。
 世良はパンツに手を掛けて、ズボンごとズルリと足の付け根まで下ろした。するとブルンと勢いを付けてペニスが飛び出て揺れてからペチリと世良の下腹を叩いた。
 やっぱりデカイ……と、改めて全容を見てから思う。ジィーとまた凝視していたら、世良が再び顔を近づけてきている事に気がついた。それもなんだか様子がおかしい。すごく鼻息が荒い。
「ちょ……世良……んっ……んんっ」
 強引に唇を塞がれた。ぎこちないがさっき伊勢崎が教えたように唇や舌を使ってキスをしてくる。条件反射でキスを受けたら更なる異変が起こった。
 カチャカチャとベルトを外す音がして、伊勢崎の股間を世良がまさぐっているのだ。
「ん?……んんっ?!」
 キスで唇を塞がれたままの伊勢崎が、眉を寄せて驚いたように唸る。
 世良は夢中でキスをしながら、伊勢崎のズボンの前を開けると、パンツの中に手を突っ込んできて、ペニスを乱暴に掴むとズルリと外へと引き出した。
「ん、んふっ、ん……」
 驚いてちょっと腰を引き気味だった伊勢崎も、その開放感と握られた手の熱い感触に、忘れかけていた欲望の疼きが頭を持ち上げる。
「ん、んん」
 込み上がる性欲に従うように、もっともっとと深いキスを求めた。舌を絡ませあい互いに愛撫するように求めあう。口の端から唾液が流れ漏れるがそれにも構わず厭らしい音を立てながらキスをした。はあはあと激しく乱れる息遣いが、互いにキスの合間に口の端から漏れる。それが更に欲望を掻き立てるのだ。
 厭らしい気持ちで頭の先からつま先までいっぱいになっていた。こんなに欲情したのは初めてかもしれない。敢えて言えば高校の時の初体験の感情に近いだろう。夢中で貪る……そういう感覚が全身を占めている。
―――世良を相手に?
 そんな考えは、なぜかこの時はまったく思わなかった。
 ギュッと握られていたペニスに新たな刺激が加わった。とても熱い塊を擦り付けられて来る。ぬるりとした感触は手とは違うもので、合わされるようにして握られて、それが世良のペニスだと気づくのに少しばかりの時間を要した。
 違う生き物のように熱く脈打つそれの感触は、伊勢崎自身のペニスの熱にシンクロする。世良が腰をゆさゆさと動かすと、押し付けられたペニスが伊勢崎のペニスを上下に擦るように刺激を与えてくれた。それとはまた別に2つをぎゅっと握りこむ世良の手が動いて、それが微妙にペニスの動きとズレた新たな刺激をもたらす。
「んあっ……ふっんふっんんっ……はあっ」
 思わず伊勢崎は喘ぎ声を漏らしてしまっていた。気持ち良すぎるヤバイと思う。思わず伊勢崎までが腰をゆるゆると揺らしていた。
「あああっうあっ……イクっ……」
 世良が顔を上げてブルブルッと身震いをしながら、シュッシュッと2本のペニスを掴んだまま激しく上下に擦りだして、ビュルルッとまた射精をした。勢い良く飛んだ精液がピチャッと伊勢崎の頬に掛かった。世良の二度目の射精も精液の量が多くて、最初の一発目は伊勢崎の頬まで飛んで首から胸までを濡らして、ドクンと続いて放たれた第2砲も胸の辺りにピシャッと飛んだ。続けてビクンビクンとペニスが痙攣して、数度にわたって精液を吐き出した。
「あっ……ちょっ……待っ……うっくぅ―――っっ」
 伊勢崎は頬に掛かった精液に一瞬ギョッとなったが、それで気持ちが緩んだ所為か、それとも世良の射精に触発されたのか、ブルリと身震いしてから伊勢崎も射精した。伊勢崎の精液は世良ほどの量は無く、伊勢崎自身の胸から腹の辺りを濡らした。二人分の精液が、伊勢崎の白いYシャツを汚した。
 二人ともグッタリとなって、肩を上下させながらハアハアと激しく息をした。頭の中が真っ白になる。とてつもなく心地よい恍惚感だった。何も考えられないから、何も言葉は無い。ただ二人の激しい息遣いだけが部屋の中を満たした。
 伊勢崎はどこをみつめるでもなくぼんやりと宙をみつめていた。世良はジッとそんな伊勢崎をみつめていた。
 精液で汚れたYシャツをみつめて、下からボタンをひとつずつはずしていく。首元まで全部を外してから、白いアンダーシャツを下から上へと捲り上げた。伊勢崎の程よく締まった腹が露になる。肌を両手の平にジックリと馴染ませるように撫でながら、上へ上へと動かしていく。胸まで捲り上げて、色素の薄い小さな乳首が現れると、両方の人差し指で、捏ねるように愛撫した。
「んんっ……ちょっ……世良っ……何やってんだ」
 びくっとなって伊勢崎が我に返った。乳首をグリグリと捏ね回す様に愛撫されて、甘い刺激にぞわぞわと体が疼く。
「あっああっ」
 乳首を愛撫されて、こんなに感じるとは思わなかった。くすぐったいような、甘い痺れのような、なんともいえない快感に体が反応する。思わず喘いだ自分の声に驚いて、カアッと赤くなってから両手で口を塞いだ。だが愛撫は止められることは無く、伊勢崎が顔を近づけてきて、右の乳首をチュウと吸ったので、ビクンと体が跳ねる。
「おまえっ……バカッ……止めろっ! あうっ……ハアハア、何、SEXみたいな事してんだよ」
「伊勢崎さんが……はあはあ……誘ったんだ……はあはあ、オレ……もう止まりません」
「バカ野郎っ!! あうっうう……誰がっっ!! オレは誘ってなんかっ……んっ」
 チュウチュウと音を立てて乳首を強く吸われた。舌の先でチロチロと乳頭を刺激されて、その度に伊勢崎はビクビクと体を震わせる。変な声が出そうになるたびに手で口を塞ぐが、嫌がる言葉や態度とは裏腹に、強引に抵抗する気配はなかった。
「貴方がズボンを脱げって言ったんだ」
「……っ!! それはっ……ああっあっ」
 カリッと乳首に歯を立てられて、伊勢崎は激しく喘いだ。乳首が性感帯なのか、自分でも今まで自覚が無いらしくひどく反応していた。
 世良はしばらくの間両方の乳首を丹念に愛撫して、伊勢崎が文句を言わなくなり、ただ体をビクビクと震わせながら喘ぎを押し殺して喉を鳴らしているのを見届けると、体を起こしてグイッと一気に伊勢崎のズボンをパンツごと下ろして完全に脱がせた。
 両足のひざの裏側を両手で持つと、グイッと膝を曲げた状態で押し上げながら大きく左右に開かせる。すると自然に尻も持ち上がり、世良の目の前に伊勢崎のペニスも睾丸もアナルも全てが露になった。それはひどく淫猥な姿だった。赤黒く怒張したペニスは、そり上がって腹に付き、睾丸も色を変えてキュウと持ち上がっていた。アナルは色素も薄く、産毛が少し生えている程度で、とても綺麗なものだった。ヒクヒクと小刻みに動いている。
 世良はハアハアと息遣いも荒くそれをみつめると、ゴクリと唾を飲み込んで自分の固くそり上がって立つペニスの先を、腰を近づけてアナルに宛がった。グイッと押し付けると、ヌルリと滑って外れた。左足を持っていた左手を離して、自分のペニスを掴むと、再度アナルに押し付けた。ググッと手を宛がってペニスが外れないように固定しながら、アナルへと押し込む。
「イテェッ! イタタタ……バカッ!! 何やってっ……イテェ! 痛いって!! やめろ!!」
 グイグイと先を押し込むが、アナルはなかなか開かず、中へと入っていかなかった。
「やめろっ!! 急には無理っ……イテッ……入るか! バカ!!」
 さすがの伊勢崎も正気に戻って、無理やり押し込まれてくる痛みに顔を歪ませた。
「解して慣らさないとっ……いきなり入るか!! 痛いって言ってんだろ!! バカ!! 指とかで解すんだよ!!」
 伊勢崎は必死に叫んでいた。世良はそこでようやくハッとなり、無理やりペニスを押し込むのを諦めた。一度腰を引いてから、ペニスを掴んでいた左手の人差し指をアナルに差し入れた。ゆっくりとそれでも根元まで一気に差し入れる。
「わっ!! バカ!! 何、指入れてるんだよ! やめろ! やめろやめろ!! ああっ」
 突然の尻の中に入ってきた異物感は、痛くは無いが気持ちの悪いもので、伊勢崎は抵抗しようにも下半身に力が入らなくて首を振るしかなかった。
 伊勢崎は根元まで入れた人差し指をゆっくりと出し入れし始めた。
「あっ……ちょっ……やめっ……気持ち悪っ……んんっ」
 ビストン運動のように、指を出し入れして動かさせて、中を蠢く指の感触に伊勢崎は眉を寄せた。動きにあわせてハッハッと息を吐く。暴れて抵抗するという考えは何故かなかった。ただ無意識に体が、痛くなくしようとするように、世良の指の動きに息遣いをあわせて、力を緩めて、自然と体を開いていく。
 指を締め付けていた力が取れて、出し入れする動きも滑らかになったので、世良は中指も差し入れて2本に増やした。それを同じように出し入れさせながら、次第にくっつけていた指の間を開くようにして、アナルを左右に広げていく。
 頭を下げてアナルに顔を近づけると、ツーンと濃い匂いが鼻を付いたが気にはならなかった。舌を突き出して、指を出し入れしているそこへ、潤滑剤にするように唾液を注ぎこむ。下の先でアナルの皺を舐めると、「ううっ」と伊勢崎が声を漏らすのが聞こえる。グチュグチュと指を出し入れさせながら、入り口を丹念に愛撫し続けた。
 次第に緩んできて、2本の指の出し入れも容易になってくると、薬指も足して3本を差し入れた。
 ずいぶん時間をかけて、しつこいくらいにアナルを解し続けていた。伊勢崎はすでにもう何も考えられなくなっていて、ただ体が痛みを逃れるためのように、世良の行為にすべてをゆだねていた。足を開き、体の力を抜き、グチュグチュと淫猥な音を立てて解されるアナルを開いて、ハアハアとただ激しく息をするだけだった。
 世良のペニスは再び限界にまで来ていた。目の前の淫らな姿の伊勢崎は、あまりにも性欲を掻きたてられる物で、自分の指で伊勢崎のアナルを犯し続けるという行為も、ひどく興奮するものだった。
 腹に付くほど反り上がった世良のペニスは、今にも爆発しそうなほどに熱く脈を打っていて、ビクリビクリと前後に痙攣して揺れていた。その先端からは先走りの汁をダラダラと垂らし、自身を濡らしている。
 もう……と、耐えられずに伊勢崎のアナルから指を引き抜くと、再び左手でペニスのカリの部分を支えるようにして持つと、グイッとアナルに先端を押し付けた。するとさっきとは異なり、ペニスの先はグググッとアナルの入り口を押し広げて中へと埋まっていった。
「うぐっ……うううっ……んんっんっんっ……ん―――っ」
 伊勢崎が苦しそうに顔を歪ませて唸り声を上げた。
「伊勢崎さんっ……あああっあっ……伊勢崎さん……力を抜いてくださいっ……」
 亀頭が完全に中に入ったところで、ペニスに宛がっていた手を離すと、両手で伊勢崎の腰を掴んで、更にグググッと腰を進めていった。肉を割ってゆっくりとペニスが伊勢崎の中を貫いていく。
「ああっああっ……痛い……世良……痛い……」
 あまりの質量に、伊勢崎のアナルが裂けそうに思うくらいにいっぱいに広がっていた。ハアハアと激しく息をしながら、伊勢崎がうわごとの様に呟いて、腰を掴んでいる世良の腕をギュウとしがみつく様に握った。
「伊勢崎さんっ……熱いっ……うううっ……んんっ」
「苦しい……苦しい……世良……ああっあっあっあっ」
 半分ほど挿入したところで、それ以上は入っていかなくなり、世良は一旦諦めると、腰をゆさゆさとゆすり始めた。伊勢崎の中はひどく熱く、ギュウギュウと締め付けられて、もうこれ以上は挿入に集中できなくなっていた。今にも射精してしまいそうで、思わず腰を揺さぶりだしたのだ。
 下腹を異物で押し上げられるような変な感覚に、痛みはなくなったが苦しくて伊勢崎は顔を歪ませた。揺すられると鈍い痺れが、直接ペニスへと伝わるような不思議な感覚に襲われる。それは射精感にも似た痺れだった。
「あっあうっああっあっ」
 揺すられるたびに声が漏れる。止めたいが止められなくて、ただハアハアと激しく息をするしか出来なかった。鈍い痛みと苦しさとかすかに込みあがってくる新しい快感。交じり合うそれらの感覚に伊勢崎は支配されて、また頭の中が真っ白になっていく。
―――このまま絶頂までいけるかも……
 ふとそんな考えが頭をよぎった。射精とは違うエクスタシー。今までのSEXでは味わったことの無い、知識だけのそれが思い浮かんでいた。
「あっあっあああああ!」
 その時声をあげたのは伊勢崎ではなかった。世良だった。恍惚とした顔でブルブルと紅潮した顔を震わせながら、腰を痙攣させている。何かが体の中に出されたのを感じた。世良がまた射精したのだ。それも挿入したまま。
「世良っ……お前っばかっ……あっあああっあっあっあっ」
 伊勢崎は一瞬正気になって毒づこうとしたがそれも叶わなかった。ユサユサと激しく体を揺すられたからだ。世良が前後に腰を動かし始めたのだ。ジュジュジュッと音を立ててペニスが出し入れされる。激しいビストン運動に、伊勢崎はただ喘ぐしかなかった。痛みはもう無くなっていたが、異物による圧迫感は強い。ペニスが出し入れされるたびに、内壁が擦られて肉を持っていかれるような感覚がする。
 世良の太いペニスは、伊勢崎の直腸いっぱいに埋められているようで、カリが壁を擦っていた。時々それが前立腺に当たって刺激する。
「あっあっあうっあうっ……はあはあ、ああ、ああっ」
 どちらの喘ぎ声が分からないほどに、二人とも紅潮した顔で荒い息遣いと声を出していた。
「伊勢崎さんっ……伊勢崎さんっ……伊勢崎さんっ……ああっあっあっあっ」
「世良っ……んんっんっあああっ」
 二人とも同時だった。体を反らせると、ビクビクッと痙攣して射精した。精液が出なくなるまで、腰を揺すりながら、余韻を味わうように何度かキスをしあった。
 次第に息が落ち着いてくる頃、飛んでいた意識も戻ってくる。
『何やってんだオレ……』
 ふと、伊勢崎は思っていた。世良とSEXするなんて……というか、自分が掘られる側だなんて……というか、何、尻を掘られて射精してるんだよ。とか、いろんな突込みを自分にしながらも、不思議なことに気持ち悪いとか、嫌だとか、後悔の気持ちは何も浮かばなかった。
 ただ脱力感だけがある。
「世良……」
 少しかすれた声で名前を呼ぶと、赤い顔をした世良が困ったような顔で伊勢崎をみつめていた。後悔しているのか……いや、これは怒られると思っている顔だ。
『なんて顔をしてんだ』
 伊勢崎は内心苦笑してから、ハアとため息をついた。
「いいかげん抜けよ……いつまでちんぽを突っ込んでるつもりだ。それに……背中が痛い……オレは立てそうに無いから、ベッドまで運んで寝かせてくれよ」
 気だるそうな顔でそう言ってから、薄く笑ってやると、世良はみるみると嬉しそうな顔になって「はい」と返事をした。
 後悔とか、面倒くさいことは後でしよう……伊勢崎はぼんやりとそう考えていた。


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