カリフォルニア・ドリーム

モドル | ススム | モクジ

  9  

 その日の昼前には、氷上は司郎を連れ立って、不動産仲介屋の所へと出向いていた。司郎は完全に萱の外で、氷上が仲介屋をまくし立てるようにして、契約を破棄し、前金を奪い返していた。
「やっぱりオレが来て良かったよ」
 帰り道で氷上が呆れた様に溜息をついて言った。
「書類見て驚いた。物件を見に行くまでも無いよ。あの住所はスラムで、すごく危ない場所だ。日本人があんな所に住める訳無いよ。もしもアパートが良い建物だったとしても、場所が悪すぎるよ」
 司郎はただ「そうですか」と頷くしかなかった。
 その後二人でランチを食べて、家へと戻った。なんだか解らないけど、司郎はまだ居候を続けても良いらしい。その上、氷上がなんだかご機嫌なので、司郎は特に文句も無かった。さすがの司郎でも、色々と思うことはある。氷上が言った言葉も色々と引っ掛かる。
 あの夜の事は、とにかく氷上が怒っていないからと言う事で、無罪放免となった。あの事が責められないのだとしたら、それは『やってもOK』ということなのだろうか? その辺りが、とても微妙なニュアンスでうやむやにされている気がする。司郎は自分で、あまり調子に乗ってはいけないと肝に銘じて居るのだが、でも氷上を好きな気持ちは変わらない。ずっと好きであり続ける限り、そのゴールは氷上との相思相愛であり、もちろん結ばれたいと思っている。
 司郎は若いから、性欲だって余りあるほどある。かなりある。だからいけない妄想なんていつも思っているし、あの夜の事だってあれっきりになんてしたくない……というのが正直な気持ちだ。氷上がその事を怒っていなくて、別にOKだよ……っていうのならば、すぐにでもまたやりたいなんて欲望があるのを、強固たる理性で押し留めて居るのだ。氷上は、司郎の気持ちを知っていて、半ば容認してくれている。このまま側にいられないからと出ていく司郎を引き止めて、まだ一緒に暮らしても良いという。この状況に、「もしかして……」なんて、司郎が誤解したとしても仕方ないのではないかと思う。
 司郎はとりあえず冷静になってそんな事を考えた。氷上の気持ちが知りたい。


 いつもと変わらぬ日々が戻った。氷上が新しい映画の仕事について教えてくれて「しばらく助手をしてみないか?」と言ってきた。もちろんそれを断る理由なんて無く、むしろあまりにも良い話で信じられないくらいだ。
『夢』がまた一歩近づいてきた気がする。
 夢中で氷上の仕事を手伝って、毎日が楽しくて楽しくて、あの事なんてすっかり忘れそうになっていた。氷上は仕事にとても厳しかったけれど、それに真面目に答えれば、とても評価をしてくれた。『助手』とは良いながらも、スタジオでの司郎への扱いは、とても特別なのだと時々周囲の人の言葉を聞いては思い知らされた。
『氷上さんは、案外オレの事を好きなのかもしれない』
 もちろんそれは自惚れかも知れない。好きの意味だって色々とある。でも司郎が氷上を思う気持ちと同じ意味での『好き』を、氷上の中に感じているのは、まったくの勘違いとも言えない気がしていた。
 一緒に居れば居るほど、氷上を好きだという気持ちは高まっていく。知れば知るほど好きになる。氷上が司郎に対して、少しずつ心を許して、親しくなればなるほど思いは募った。このままでいるのは辛いとも思う。好きだと自分の気持ちは告白した。氷上も知っている。ならばこれ以上はどうしたらいいのだろう?
 氷上の気持ちが知りたい。
 結局はそれしかない気がした。
 焦っているわけではない。でも、好きな人の気持ちをハッキリと知りたいと思うのは当然の事だと思う。少なくとも拒否はされていないのだ。それを自惚れでは無く、確実な思いにしたかった。
「氷上さんは……オレがまた氷上さんとキスをしたいなんて言ったらどうしますか?」
『氷上さんはオレのこと好きなんですか?』なんて直球な質問は、さすがに出来なくて、とても遠まわしな聞き方をしてしまった。
 それは司郎のせいいっぱいの駆け引きだった。氷上はバイだと言った。でも男との関係は好きな相手としかやらないと言った。行きずりの遊びではないという意味だと思いたい。女性とはエッチだけの関係にはなれても、男性とは恋愛感情がなければそういう気にならないのだと……そういう意味なのだと司郎は理解していた。最初は思いつかなかったけど、ずっとずっと考えて、ようやくそこまでの結論に辿りついた。
 リビングの向かいのソファに座って、お茶を飲みながら本を読んでくつろいでいた氷上が、驚いたような顔をして司郎を見た。
 司郎は、真面目な顔で氷上を見つめ返す。
「どうしたの? いきなり……」
 それが氷上の最初の答え。
「オレ氷上さんとキスしたいです。ダメですか?」
 司郎は怯む事無く言葉を続けた。随分強気になっているかもしれない。でも氷上のことが好きだから、好きで好きで堪らないから、こんな事で怖気づく事は出来ない。かなりの覚悟で言っていた。
 真っ直ぐな目でみつめられて、氷上の方がたじろいだ。
「ダメですかって言われても……」
 氷上がそう言って、困った様に目を伏せる。頬がほんのりと染まっているようにも見えて、その表情が決して嫌とは言っていないと思って、司郎は腰を上げると氷上の隣りに席を移した。
 ソファのクッションが、司郎の重みで沈んで、氷上が少しだけビクリと肩を震わせた。司郎が顔を近づけると、氷上は目を閉じて逃げなかった。それは暗黙の了解だと思う。司郎はこれでやめる訳にはいかないと、かなりの覚悟で唇を重ねた。
 最初は恐る恐る、触れるような軽いキス。1度離れて、また重ねた。
 二度目のキスで、氷上が嫌がっていない事を確信して、触れるようなキスから、もっと唇を押し付けるように重ねた。氷上の柔らかい唇をしっかりと、自分の唇に感じる。その薄い皮膚を通して、氷上を感じた。
 ゆっくりと唇を離したら、氷上の唇が後を追うようについてきた。三度目のキスは氷上から……司郎の下唇を唇で挟む様にしてやんわりと吸い上げられた。
 それがきっかけの様だった。司郎はもう自分で止められなくなった。夢中で氷上の唇を吸う。その体を腕に抱きしめて、貪る様に氷上にキスをした。
 すごくぎこちなく、でも一生懸命に求めた。
 氷上もそれに答える。
 氷上は不思議だった。司郎のキスはお世辞にも上手いとはいえなかったけれど、とても気持ちを昂ぶらせられた。体が熱くなった。こんな気持ちは初めてだと思う。こんなにも純粋に求められて、嫌な気持ちになるはずもなかった。とても心地良い。誠実でまっすぐなその思いを受けて、とても優越感を覚えた。なんの邪推もない真面目で、一途で、まっすぐな思い。そんな風な相手から、1度は愛されてみたいと、どこか憧れていたのかもしれない。
 強く抱きしめられて、激しく求められて、氷上はぼんやりとそんな事を考えていた。乱暴なキスも、強く抱きしめられる体も、とても苦しいのだけど、なんだか笑みが零れるくらいに嬉しい。
 ようやく唇が離れて、体が少し解放されて、目を開けたら、目の前にある司郎の顔が紅潮していて、目が少し潤んでいて、息遣いが荒かった。
『興奮している。きっと余裕がないんだ』そう思ったら可笑しいようなテレ臭いような気分になって、氷上は思わずクスクスと笑ってしまった。
「待って待って……そんなにがっつくなよ」
 氷上が笑いながら言ったので、司郎は我に返った。
「す、すみません」
「キス以上の事がしたいの?」
 氷上が誘うように尋ねる。甘い韻を含んだ囁きに、司郎はゴクリと唾を飲み込んだ。
「いや、別に……」
 言葉を言いよどみながらも、明らかに瞳をギラギラとさせて、はあはあと息遣いの荒い司郎に、氷上は笑いがこみ上げる。
『かわいいなぁ』
 そう思って、司郎の顎にチュッと音を立ててキスをした。
「まだダメだよ」
 クスッと笑ってそう言ったら、司郎は目を丸くした。楽しくて仕方ない。それは幸せなドキドキだ。氷上はそう思いながら立ちあがると、キッチンへと向かった。紅茶のおかわりを作る為に……。


 公私共に充実している……とは、ここ数日の司郎の事だ。一念発起でやってきた夢の国アメリカで、今確実に夢に続く道を、一歩一歩歩いているのを実感している。大した苦労もしないままで、それも短期間での事なのだから、これほどのラッキーボーイはいないだろう。人に言われたら、その通りだと司郎自身もそう思う。
 この仕事は傍から見たら、かなりの過酷な労働かもしれない。作業に入れば昼夜を問わず、寝るのも惜しんで仕事した。徹夜なんかあたり前、司郎はまだ見習いだから、パシリ仕事も多くて、広いスタジオの中を、マラソンランナーのように走りまわされる。肉体労働がほとんどで、時折氷上の手伝いで、ようやく撮影模型の組立てに参加させてもらえるが、仕事場での氷上はとても厳しい。何度も何度もリテイクを出されて、普通だったらとっくにヘコたれるかもしれないってくらいに、何時間もかけて作った部分を、簡単に壊される。
 それでも司郎は楽しくて楽しくて、幸せで幸せで、堪らなかった。今、ここにいる自分の存在が、それだけで幸せで堪らない。夢にまでみた仕事を、夢にまで見たスタジオで、その一遍なりとも関わらせて貰えているなんて、これを幸せと思わなくて、なんの為に身ひとつでこの大陸に来たというのだろう。
 そんな司郎の真面目で真剣な態度は、周囲の人々にも好感が持たれて、すぐにかわいがられるようになった。
「不思議なヤツ」氷上はつくづくそう思う。
 そんな司郎に、氷上も救われていた。弟子を取るなんて柄ではない。面倒くさい。人を育てるなんて出来ない。ずっとそう思っていた。仕事に関しては、一人の方が良い。ずっとそう思っていた。でも司郎と一緒に居るのは苦痛ではなかった。むしろ仕事が楽しくなる。『癒し系』そんな感じだ。仕事場でも、自宅でもずっと一緒……ヘタすれば24時間ずっと一緒だ。それでもちっとも鬱陶しいと思わなかった。
『こんなにデカイのに……』と苦笑する。
 年下で、チェリーボーイで、純情で、真面目で、一途で、でも意外と頑固な大型犬。
 氷上がそんな風に思っているとは、司郎は思いも寄らないだろう。
 そんな司郎でも、ちょっとは悩んでみたりもしていたりするのだ。ちょっぴりだけど、時々悩んでしまって困る。何にって、それは氷上の事だ。氷上にとって自分の存在って一体なんだろう……と、ふと考える。あれ以来氷上の家の中で、司郎の立場が微妙に変わった。いや氷上の態度が変わったと言う方が正しいだろう。まず1番変わった事は、氷上は頻繁にスキンシップを取って来るようになった。これは『甘えられている』そう取っても良いだろうと思う。
 何気ない日常、TVを見たり本を読んだりするような、そんな何気ない時、ソファに座る司郎に、必ずと言って良いほど、氷上はその膝の上に座ってくる。いや、正確には座る司郎の股の間に身を沈めて、まるで『司郎という名のソファ』でくつろぐかのごとく、背中を司郎の懐に委ねる。
「司郎はデカイから、居心地がいいんだよな〜」なんて、嬉しそうに言われると何も言えなくなる。そこはすっかり氷上のお気に入りの場所になってしまっていて、司郎の胸に、後頭部をスリスリと擦りつけるようにして甘えるような素振りをする。
 その行為は、一向に慣れるようなはずもなく、毎度毎度、司郎はドキドキとなって焦ってしまうのだ。氷上は、司郎が焦っているのを知っている。それもまた楽しくて居心地が良いらしい。氷上の事が好きで堪らないのだとあからさまに解る純情な司郎の態度が、とても心地良いらしい。
 そして司郎は悩む。オレ達って恋人? ではないな。(さすがに否定)だけど以前の関係とはあきらかに違う。こんな風に氷上はスキンシップをしてくるし、甘えると言う事は、只ならぬ関係だと自惚れても良いはずだ。それに、キスはOKらしい。(それ以上は、まだダメだと言われるけど)毎日キスをする。大抵は氷上から仕掛けてくる。さすがにまだ司郎からは出来ない。勇気もきっかけもないからだ。でももしかしたら、司郎からキスを求めても、拒まれないのかもしれない。とは思うけど、出来ないで居る。
 啄ばむようなキスが、毎日のほとんどなのだが、たまに濃厚なキスをする時もある。司郎が盛り上がってしまうからなのだが、それ以上の体勢になりそうになると、スルリと交わされる。
「もっとキスが上手くなったら、考えてあげても良いよ?」
 逃げた氷上が、ニッコリと笑ってそう言った。
「え?」
 司郎は、ドキマギしながら、赤い顔で聞き返す。
「だから司郎が、もっとキスが上手になって……オレをその気にさせられたら、それ以上の事……そうなっても良いって言ったんだよ」
 逃げた氷上が戻ってきて、司郎の膝の上にチョコンと座りながら言った。チュッとついでに唇を吸われる。司郎はしばらくジッと氷上をみつめてから、おもむろに立ち上がった。膝に座っていた氷上も転がりそうになって、つられて立ち上がった。
「どうした?」
「あの、ちょっとトイレ……」
 赤い顔で、前屈みにトイレへと去っていく司郎を、ポカンとした顔で見送ってから、氷上はゲラゲラと笑った。
 可愛い、堪らない。氷上はかなりのお気に入りだった。
 トイレで、1回抜いてから、司郎は溜息をついた。からかわれているのだろうか? だけど、ちっとも嫌じゃないし、腹も立たない。それくらい氷上が好きで堪らない。なんでだろう? 自分でも解らない。なんでこんなにも氷上に夢中なんだろう? 好きだ。大好きだ。からかわれていたって良い。恋人でなくったって良い。氷上の側に居たい。抱きしめたい。キスしたい。
 リビングに戻ると、氷上はソファではなく、ソファの前の床にチョコンと座ってTVを見ていた。司郎が戻ってきてソファに座るのを、振りかえってじっと眺めていた。
「なんですか?」
 トイレで抜いて来た事をからかわれるのかな? と思った。しかし氷上は黙ったままで、ジッとみつめている。しばらくの間の後、真面目な顔のままで氷上が口を開いた。
「ねえ……なんで司郎はゲイになっちゃったんだい?」
 氷上の顔をしばらくみつめて、司郎は動揺する事無くキッパリとした口調で答えた。
「オレ、ゲイじゃないです」
「でもオレの事が好きなんだよね?」
 氷上は、クスリと笑ってから、小首を傾げて聞きつづける。
 デジャブ? こんなやりとり、前にもやったぞ? と思いながら、司郎はしばらく無言のまま考えた。氷上が何に拘っているのか、何を知りたがっているのか、その真意は未だに解らない。大体、今の二人の関係だってよく解らないのだ。それでも司郎は日々成長しているつもりで、大人なのだから、毎日自分なりに色々と考えて、気持ちの整理をつけている。このやりとりだって、近い物を以前にやって、それから司郎なりに考えもした。確かな答えは出ていないけれど、自分の気持ちはひとつしかない。
「オレが好きなのは氷上さんであって、別に男が好きな訳じゃないです」
「そんなのおかしいよ」
 司郎の答えを予想していたかのように、氷上が間髪入れずに返してきた。それでも司郎は負けない。
「おかしくなんかないです。今までだって、今だって、別に男性に興味がある訳じゃない。スタジオで他の人と一緒にいても、誰と親しくなったって、氷上さんのような気持ちにはならないし……むしろ他の男とキスなんて、考えただけでゾッとするくらいです」
 迷う事無く、まっすぐな目で見つめ返しながら、きっぱりとした口調で答える司郎に、ちょっと驚きながらも氷上は更に質問を続けた。
「だけど、司郎は今まで女性経験がないんだろ? それでオレの事を好きになって……もしかしたら初体験がオレって事もあり得るわけだよね? だったらゲイじゃないのか?」
「確かにそれはそうですけど……氷上さん以外の男性とのSEXなんて考えられませんから……ゲイじゃないです」
 断固として否定続ける司郎に、氷上は興味を示したヨウに目を細めた。氷上は時々、司郎をみつめているヨウで、その先に他の誰かをみつめているように見えることがある。それは司郎の気のせいではないと、今もそんな視線でみつめてくる氷上を見つめ返しながら思っていた。その視線は、司郎を見ているようで見ていない。そう思う。氷上は、司郎を通して一体誰をみているのだろう?
「司郎は……本当にまっすぐで誠実だよね。だからそんな風に言い切れるんだね」
「オレ、何度も言いますけど、本当に氷上さんが好きなんです。好きって気持ちのほうが最初にあって……だからキスとかSEXとかは、別になくってもいいんです。だから上手く言えないけど、オレの女性経験とか、童貞だという事とか……ゲイかどうかとか……そういうのだって、本当はどうだつていいんです。氷上さんの事が好きなんだ。それだけじゃダメなんですか? 何か理由が必要なんですか?」
 ムキになって言った。試されている様に質問される事に少し苛立っていた。自分と誰かを重ねられている気がするのも、苛立ちの原因だった。
「氷上さんだって、バイなんでしょ? 普通なら女性で満足していいんじゃないですか?男性もOKって事は、氷上さんこそゲイなんでしょ? なのに、そういう言い方って、氷上さんはゲイを否定しているみたいだ」
 別に喧嘩するつもりもないし、氷上を責めるつもりも無かった。でも少しばかり口調がキツクなっていた。相手にされず、振られるのならば諦めもつく。だが司郎の気持ちを知った上で、擬似恋人のような振る舞いをする氷上に翻弄されて、それだけに浸れるならば騙されても良いとさえ思っているのに、何度もこうやって気持ちを試される様に質問される。そんな氷上に苛立ちを覚えてしまった。
「そうだね」
 氷上は意外にも、司郎の言葉に大人しく頷いた。目を伏せてうつむく。その姿がなんだか寂しげで、司郎は胸がチクリと痛んだ。
「オレがなんでバイになったのか教えようか?」
「え?」
 司郎はギクリとなった。思わず息を飲んで身構える。氷上は顔を上げて、司郎をみつめると、自嘲気味な笑みを浮かべた。
「強姦されたんだよ……男に」
 氷上の言葉に、司郎は言葉を失った。
「18歳の時に……強姦されたんだ」
 氷上はもう1度、その痛い言葉を繰り返して、苦笑してみせた。

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