雨が止んだら

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  12  

 藤崎は、デジャブーを感じた。このシーンはどこかで見た覚えがある。
 あの夢だ。藤崎は自分が眞瀬を意識するきっかけになった「あの夢」を思い出して、ドクンと心臓が跳ねあがった。
 眞瀬は、下着をずらして中の物を取り出した。
「すごい……」
 眞瀬は、思わず小さく呟いてしまった。それは立派な大きさをたたえて、脈打ちながらそそり立っていた。眞瀬は、それに手を添えると口に咥え込んだ。
「うっ……ま……眞瀬……さん……」
 あまりの気持ちの良さに、藤崎は喉を鳴らした。眞瀬の舌が、藤崎のソレを舐め上げ、刺激する。
「ハアハア……そんなにしたら……オレ……」
 藤崎は、初めての快感にすぐにでも果てそうになるのを、懸命に堪えていた。しかし眞瀬に強くそれを吸われて、我慢の箍が取れてしまった。
「ウッ……」
 ビクンと腰が揺れて、眞瀬の口の中に、精を放出させた。勢い良く出る精を、眞瀬はすべて飲み干した。
「あ……眞……眞瀬さん……すみません」
 藤崎は息を荒げながらも、慌てて眞瀬を覗きこんだ。眞瀬は満足げに口を拭いながら、ニッコリと笑って顔をあげた。
「気にしないで」
 そう言いながら、立ちあがると、自分も服を脱ぎ始めて、全てを脱ぎ終わると、ソファに座る藤崎をまたぐ様に、ソファに膝をついて乗り上げた。
「すごい……元気だね……もう復活してる」
 眞瀬は、藤崎の息子を見てクスリと笑った。藤崎は赤くなった。
「君のを濡らしたから……大丈夫だと思うよ」
「え?」
「ジッとしてて……」
 眞瀬はそう言いながら、自分の人差し指を舐めて、自分の秘所にあてがった。
「ん……」
 吐息を吐きながら、バックに指を入れ、少し掻き回すようにほぐすと、そのまま腰を落としていった。
「あ……」
 思わず声を出したのは、藤崎のほうだった。藤崎の立派なソレを、眞瀬の秘所が飲み込んで行くようだった。ペタンと最後まで腰を落とした所で、眞瀬は「ハァ……」と大きな悩ましい吐息を吐いた。
「どお? オレの中は……」
「す……すごくいいです……」
「裕也のも……すごく良いよ」
 眞瀬がウットリした顔でそう言ったので、藤崎の中の何かに火がついたようだった。
「眞瀬さん……」
 藤崎は、眞瀬を抱きしめて、唇を重ねた。
「ん……」
 眞瀬も藤崎の首に腕を廻した。藤崎は、強く唇を吸いながら、そのまま体を反転させて、眞瀬をソファに押し倒すような状態にした。体を起こして、眞瀬の腰を抱くと、激しく腰を動かした。
「ああ!」
 眞瀬は、思わず声を上げた。藤崎は、無我夢中で眞瀬を抱いた。
「すごい……裕也……ああ……そこ……」
 激しく突き上げる藤崎の腰に、眞瀬は足を絡めもっとと求めた。やがて二人は、高みまで昇りつめ同時に果てた。藤崎は、大きく肩で息をつきながら、眞瀬を愛しげに抱きしめた。眞瀬も藤崎の頬に、額に何度もキスをした。
「すみません……オレ……ヘタで……なんか……夢中だったから……」
 眞瀬は、返事をするかわりに、気だるげに首を振った。眞瀬の紅潮した顔と、うるんだ瞳が、とても悩ましげだった。
「夢……みたいだ……」
 藤崎は、小さくつぶやいた。
「え?」
 眞瀬が、まだ息を乱しながらも聞き返した。
「あ……いえ……眞瀬さんと、こんな風になれるなんて……なんだか夢みたいで……幸せだなって……」
 藤崎は、少し赤くなって、そう答えた。眞瀬は、微笑んで藤崎に軽くキスした。
「夢なんかでいいの?」
「い、いえ……夢のままでは嫌です。オレ……ずっと眞瀬さんと一緒にいたい。眞瀬さんをずっとこうして抱きしめて、眞瀬さんが笑う顔を見ていたいです。早く……早く大人になりますから……待っててくれますか?」
「君が大人になる頃は、オレはもっと老けているよ」
「そんな茶化すような言い方辞めてください。オレ真面目に言ってるんですから!」
「ごめんごめん……でもね、本当の事だよ。前に裕也が年の差の事を気にしているって言ったよね、自分が子供なのを気にしているって……だけど、オレだってそう。あっという間にただのおじさんになっちゃって、いつ裕也から飽きられちゃうんじゃないかって……色々考えちゃうんだよ」
「オレ、本当はずっと先の事なんて、そんなに真剣には考えてないかもしれません。だけど眞瀬さんと別れる日がくるなんて事も考えてません……できればずっと一緒にいたい。それって、もしかしたら、死ぬまでって事になるかもしれないけど……そしたら60歳70歳になれば、18歳の年の差なんて、全然解らなくなりそうじゃないですか」
 藤崎は、ニッコリと笑ってそう言った。その藤崎らしい大らかな考え方に、眞瀬は思わず吹き出した。
「そうだね……そうなるといいね」
 大人の眞瀬にとって、それがとても非現実的な夢だという事は解っていた。死ぬまで一緒にいられるカップルなんて、そんなにたくさんいる訳ではない。ましてや同性愛者となると、更にその割合は低いだろう。
 それなのに、藤崎が言うと、本当に思えてしまうのは何故だろう。今までの恋愛で、1度もそんな事を考えた相手はいなかった。藤崎だったら、きっとずっと自分の側に居続けてくれるかもしれない。
 もう雨の日が辛くなる事もなくなるかもしれない。そんな風に思えた。
 誰よりも太陽が似合う彼の側に居れば、どんな雨も止んでしまうだろう。眞瀬は、愛しそうに藤崎を抱きしめた。
「眞瀬さん?」
「雨……止んだかな?」
「え?ああ……そうですね。これから雨の降る日は、いつも側にいますから」
「うん」
 眞瀬は、藤崎の胸に顔をうずめてうなずいた。
「絶対だよ」
「ええ……約束します。絶対雨が止むまで、一緒に居ます」
「うん」
 それはきっと「絶対」なんて、とても無理な約束なんだろうと思うけど、眞瀬はその言葉が何よりも嬉しくて、幸せになれた。二人の恋は始まったばかりだけど、雨が止んだら綺麗な青空が見える様に、きっといい事があるはずだ。
 もちろん嵐もくるかもしれないけどね。
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